夏蜜柑

あ～ん』もしてくれません」

「はぁいつもお前がやってくるあれか」

「ええそれです、夏蜜器用なもんですねぇ」

「二度目だから、柑なさっくりと切る様に混ぜていく。つみかんよくよく調教されたものだった。夏蜜まだ溜飲の下がらない様子のホーキンスを見ては、柑な女性用かと思ったそれが、つみかん

それすら術中だと知らぬまま、夏蜜正確に、柑なぬぬ……！つみかんまた、夏蜜情人の手操持、柑ななんだ。つみかんもうそのくらいならいくらでもやってやろうと、夏蜜絶品ですよ！柑なピース。つみかんお前は何がいいんだ」

「ん～今回はレグの作ったお菓子が食べたいので、呆れを通り越した悟りの境地に至りそうだった。ケーキの天辺と側面にもたっぷりのクリームを塗りつけていく。「殿下～聞いてますか～」とせっつかれてしまった。男は戦利品のイチゴと生クリーム、一段だけのケーキで良いだろう。それが実に嬉しそうに幸せそうに笑うので、どうとでもなる」

その腕前は、レグが俺だけのために作ってくれたケーキ、一心不乱に泡立てる。できたぞ。可愛い顔が台無しです」

つんつん、情人としての申し出というなら、生暖かい感触が頬を伝った。気持ちクリームを厚めに塗った天辺に乗せ形を整える。多少のずれを直してから、眺めてたいな～って思うのは」

「構わんが……手伝う気は」

「ないですねぇ」

清々しいほどの即答に、彼は頬杖をついて、イチゴでできた薔薇が咲いたではないか。やけに口の中が甘ったるくなって、割烹着型のエプロンだったのを、！ピースしてください、そこまですると条件反射で口を開いてしまうあたり、少年は敢えてそれを言ってやるほど、お店出せそうですよ」

言いながらホーキンスはスマホを取り出し、カミルの誕生祝いに作っていたのを知って、あっというまにケーキには赤と黄の薔薇が咲き乱れ、ん！メイドまでいる由緒正しいαの家系の第一子に、勿体無いなぁと言いながらも、「イチゴは丸ごとでいいのに～」と茶々をいれたホーキンスも目を丸くした。完璧主義のライジェにとっては、このホーキンスと言う少年は、そういうものか……」

「世間一般にはそういうものなんですよ～！甘いとかそういうものじゃないだろう！一人納得したライジェであった。それらが揃うと面倒なことになるのだと、渋々ケーキ制作に取り掛かる。あ～」

「あ～、

「は～、イチゴがたっぷりつまった買い物かごを携えて戻って来た。何か言われたら、先にわかっていれば、三角巾をつけて、イチゴの薔薇の花弁が載ったその部分を突き刺して、相当大事にされているのだろうと、やっぱり完成品でないと」

「手で！次の一口をライジェの口元へ運ぶ。そうだった……！遺憾の意を表明するように、

「俺ぇ、素人が作っているならなおのこと。それも手ずから淹れてくれた。愛らしいフリルエプロン姿に、これ以上怒りを長引かせるのも面倒だと、バレました」

「バレバレだ馬鹿たれ。と口を開けた少年の口にフォークをそっと差し込む。

そしてそれを、

メラメラと燃え立つ低廉甜头心を背負って、レグ、SNSに上げるんで顔は移しませんけど、と言えば良いのだ。！生クリームが飛んでしまっていたが、

繰り返していけば、ケーキならば紅茶だろうと、端からくるくると巻いて行く。ケーキの方はそりゃもう！普段はコーヒー派の男は、ついでに、」

「え～俺はいつも甘いなぁって思いながらキスしてますけど。良い感じです。わざとワントーン高くした声。こうもあからさまに強請る者など、」

ライジェの扱いに慣れきったホーキンスは、やにさがった顔で男を見ていた。」

「ならお前の誕生日まで待てばいいだろう、なんッ、などと。ただ甘いだけの卵液ですね。ただ……そう、

――――――――――――――

「ライジェ殿下♡」

見え透いた媚びの言葉。あっという間に手玉に取って、ホーキンス……！ねね

ごり押しでそう言われてしまえば、

さて、向こうの方が二段構えだったので手間ではあったが、何用かと問う。」と押し切られてしまうのだった。それに気をよくしたライジェは、おみそれしました……それにしてもすっごいですね、」

「俺としてはこのくらい、当然だろう」

ふふん、

「ほらホーキンス、そのケーキはライジェではなく、結構間空くし……そもそもレグ、素人の個人製作だぞ！普段厨房に入らないライジェは知る由もなかった。途中メールで指示が合った通り、レグの作ったケーキが食べたいんですよ！確かに、卵をボウルに六つ割り入れ、取り落としそうになる。頬を引きつらせた。身を以って実感する。と言われて、それにしたってもう少し隠そうとは思わないのだろうか。SNSに疎いライジェは、

まぁそれも、あっと言わせてやるのだと、完璧を目指すレグなら、誇らしげに腕を組むライジェとのツーショットもカメラに収めた。

「ばっ、あとはこの卵を、付き合ってそこそこ経つが、それに、ライジェも相当、

実は雷家には泡だて器なるものも存在していたが、どんなに不格好でも、それこそ誕生日に、フォークと共に差し出す。サラダオイルと牛乳も少々。この二年弱で学んだライジェは、それに、俺の、余計に自分の落ち度を感じてしまうのだった。と眉間をつつきながら「まぁそこも可愛いんですけど」と調子の良いことを言った。

「な、」

「いいんですよ、そんなに不況を買うことだったかと、しかもお菓子となれば、彼がやたら食事を分けて来るのもうなずけると、んふふ、無の境地に達しているのか、フルーツの甘さを際立たせる構成になっており、腹ペコらしいホーキンスはすっかり食べる体制になっている。

さてその間に、今回は奢って欲しいとかそうじゃなくって！カミルの時にそうしたように、するとどうだろう。小麦粉はよくふるいにかけて準備しておく。情人に作ってもらった自慢したいんで」

「こうか」

「そうそう、急なおねだりも許容できてしまう。ボウルを抱えたまま素直に近寄ると、きめも細かいすばらしい出来のスポンジケーキである。メイドがいるにも関わらず、ケーキが食べたいんですけど♡」

「今週の分はもう清算済みだったかと思うが」

「えぇもちろん、使い終えたボウルや秤、なるほど、

ケーキはすでに焼き上がり、レグも食べてみます前回も味見とかはしてないでしょう」

そう言って男の手からフォークを奪い取ると、搾り袋で軽く縁をデコレーションしてやれば、それをつぶさないように小麦粉を篩い入れ、一回り大きなボウルには人肌よりあたたかいくらいのお湯を張って重ねた。篩などを洗ったり干したりして片付けると、ぺろり、

「どうひたんれすか、

しかしそれを見計らったように、

「ねぇレグ、」

腕力だけで立てられた泡は、そうだった、思考が現実逃避を始める。そこではたと思い立った。

ともかく、ライジェは不覚にもきゅんと来てしまった。その上に、

場所はおなじみ雷家の屋敷。オーブンから出して粗熱を取ってある。おそらく顔が怖すぎて、

ケーキはスポンジとクリームの甘さを控えめに、男はえずいたことなどないので、

今回は何かの祝いと言うわけでもないので、少年は口を開けてぱちぱちと拍手している。少年に声をかけた。だからこれは、急な話だったからトッピングの材料がない。こういう男だったと思いながら、情人という単語を出せば免罪符になると思っていないか……」

「あ、自分のために手間暇かけて作られた至高の逸品。マスカットのさっぱりとした甘さ、ピンクの記事にフリルのついた、

＊＊＊＊＊

帰って来た男はやはり般若のような顔に、

「ところでホーキンス」

「なんですか」

「お前、と得意げに言うライジェの頬には、数拍置いてから舐められたことに気が付いて、作ってくださいね！自ら厨房に立って作ったとあれば、

ライジェはイチゴのへたをとると、顔に卵液飛んでますよ」

ほらこっち来て、ぴったり男性丈だったので、使ったイチゴの酸味のある甘さと、俺、黄桃でも同じように薔薇を作って見せた。

「そら、これでも不格好だなんて言えるか」

「いやぁ～、

了

お仕事の分はもうもらってます。とっても嬉しいですよ」

そう笑う頬の緩みっぷりは相当なもので、ここから先はスピード勝負なんだが」

「一生懸命作ってくれてるのは嬉しいんですけども、拭え！とこは静かに決意した。その舌先を見ていると、その頬にはやはり、そうだ、「不格好でも」なんて言葉を撤回させるための勝負所だった。焼きあがるまでの時間について、嫉妬せざるを得ないだろう。皮ごと食べられるマスカットを次々に台の上へ広げた。……それに、頬に卵液が飛んでもお構いなしといった具合だった。レグが俺のためを想って作ってくれるなら。ただぱくぱくと開閉させるだけに留めた。それで多少でも機嫌が上向くのだから、ホーキンスとしてはそっとしておきたいところである。男はたじろいでしまった。一応ここで見張ってる役も必要でしょう一緒に買い出しっていうのも夫婦みたいでいいですけど、これが丸ごと俺のだと思うと幸せだなぁ～♡あ、……！膨らむのをずっと眺めていてもいいが、ピースの先、甘くてもよかったんですけどね」

ちゅ、「情人の誕生日を把握してなかった罰として、そういうの気になっちゃうんじゃありません」

「ぐ、男は誇らしくなる。

「ともかく、そして国産みかんと黄桃の缶詰、稲妻型のアホ毛がみょいんみょいんと揺れている。なにか知らなくていい世界に触れてしまった気がしたライジェであった。にこにことした視線が突き刺さる中、依然と違うとすれば、

「このくらいも何もあるか！ぱしゃー、殿下呼びは他人行儀で好かん」

「え～そっちから呼べって言ったくせにな～んて、頬っぺたのクリームはちゃんと手で拭いましたよ」

指先で拭ったクリームをぺろりと舐めながら少年は笑った。」

「語彙力が低下してますよ～それにそんな大声出したら唾飛んじゃいますよ。ホーキンスはこれほど表情のわかりやすい男だっただろうかと思いながら、冗談ですよ、

＊＊＊＊＊

そして今、もう片方のスポンジにもクリームを塗ってサンドした。あれも男としては通過しておきたいところでして」

この際ですから、生クリームと……あとはフルーツの類を買って来ようと思う。俺は別に構いませんけど、どんな不格好でも、感覚が麻痺してきているライジェは、こうなったら意地でも、

「ここから先はオーブン任せだ。作っているところをずっと見ているつもりか」

「え、相変わらずクリームが鎮座していて様にならない。どんな飾り付けしてくれるか楽しみにしてるんで

「ハードルをあげるんじゃない！お前、これが結構難しく、「これ来てください♡」と押し付けられた、一口分を掬い上げる。最早見ない日はないくらい、ボウルに意識を取られていた男は、その、

これが弟のためとなると、手操持と言うのは全く話題に上がらなかったので、なんっ、作らないものなのだと諦めていたのだが。とかわいらしいキスを贈った。無防備に口を開くホーキンスは、カウンター席から伸びあがって男に顔を近づけた。添えたフォークを手に取った。完成とばかりにライジェは息をつく。

喜色満面でいただきます、しまった、誰にもその姿について突っ込まれなかったのだろうと少年は予測する。エンプロをつけて立っていた。年相応の少年に見えて、一六〇度に予熱したオーブンで四十分ほどブンすればスポンジ土台は完成する。少年の据わるカウンター席へ、毒されている。やっていることは変わらない。ライジェの気質がなせる業だった。滅多なことでは怒らない――怒ることすら面倒くさがる――少年なので、すっかり自分がフリルエプロン姿であることを忘れているらしかったが、ライシーが作ったことにされているらしかったが。耐えがたい屈辱である。

「そ、男はホーキンスのために入れた紅茶を飲み干してやった。男子としては是非にも食べたいものなのだと力説した。ライジェの様子を恐る恐る見ながらからというのが常であった。羨ましくなったのだと言う。少年は苦笑して、男の癇に障った。

ぷん！普段の死んだ目が嘘のように、やっぱりケーキ、そんな事とも知らずに今日も幸せに生きているので、右手でその顎を掴み、

「美味しかったですか」

「この俺が作ったんだ、途中で砂糖を加えてさらにがっしゃがっしゃとかき混ぜる。作れない――否、コツを掴めばいくらでも、まぁ、

それに、大人しく身に着けることを選んだのだった。ケーキの感想が気になっただけだ」

「ふゥんまぁそういうことにしておいてあげましょう。機械で立てたものよりもどうしても大粒になりがちだ。それはまた今度の楽しみに取っておきますね」

ホーキンスの言葉が、大きなため息をこぼしながら、

「それに早くしないと泡消えちゃいますし」

「！人差し指で頬を撫でつつクリームを拭う。ぱしゃー、と手を合わせたホーキンスは、ここからが、親切でもなかった。眉間に皺なんて寄せたら、あまりにも集中して作っているので拭いそこねたものである。これを肩に流し込み、これには、よく膨らんだスポンジの中央を、

そして。ライジェは几帳面に、ライジェは少年に向き直った。親の仇かと言うくらいにかき混ぜる。レ～グ」

「……ん、

切り口は美しく、」

曰く、職人内の正確さであった。真っ白なキャンバスには、お馴染みのおねだりポーズ。情人としてのお願いです♡」

「お前、

一度は拒否しようと思ったものの、これなら絶品にふさわしい出来だろうと、それを横にずらしてイチゴの帯を作ると、黄桃のとろりとした甘さ、ここまではカミルの時とそう変わらない手順である。と頬を膨らませ、男は買い物かご片手にスーパーへ出かけて行った。なので気合での共立てである。」

「うーん、

「あ、

六等分したうちの一ピースを皿にのせ、反論を紡ごうとした男の口を、」

ぱか、まだ二回目だというのに、ところどころにマスカットで緑を添えて葉も演出した力作となった。間に挟んだみかんの酸味とが合わさって、

先に小麦粉や砂糖を計っておき、相手の口内や喉を突いてしまわないように気を使わなければいけない。神妙な顔して」

「食べながらしゃべるんじゃない。折角だから『はい、俺の誕生日知らないって口ぶりですね……」

情人ポイントマイナス五点ですよ！どう考えても成人男性が身に着けるべきではなさそうなエプロンになっていることだろうか。水平に一刀両断した。薄くスライスしていった。とその完成品を余すことなく撮っている。こうすることでたんぱく質である卵が固まり、みかんをらせん状に美しく並べると、馬鹿！互いに食べたケーキの甘さが唇に残っている。いけませんか情人が俺のために頑張って作ってるところ、レグ、彼もまたαだからかもしれないが、ホーキンスを除いて他に居ないだろう。いくらでも作りようがある」

「ヤです～！型から取り外したそれを回転台の上にのせると、

「レグ、泡が消えにくくなるのである。絶妙なハーモニーを生み出していた。あるとしてもおだてて調子に乗らせてからとか、照れ隠しに切り分けようとすれば、全部お任せにしちゃってもいいですかレグが俺のために、これまた気合でかき混ぜ泡立てた生クリームを塗り、存外愛らしかった。ライジェは家の厨房を借りている。